職場の反応
海苔をはりつけた眉をひっさげ、
私は出勤した。
「グッドモーニング、げば」
同僚が私とすれ違い、
えっというような顔をして振り返った。
私の顔を正面から見据え、
「どうしたの！その眉！」と叫んだ。
私は消え入るような声でいった。
「いや、そのぅ、変よね？」
同僚と私の間に一瞬の間が起きた。（第三者がこの眉をみるのは初めてなのだ。）
私は固唾をのんで同僚の次の反応をまつ。
同僚はほぅーとほうけたようなためいきをつき
こういった。
「ス・テ・キ！」
「はぁ？」
「とってもいいわ！美しい！んもう！すてき！」
それからはすれ違う人のほとんどが
「すてきな眉毛ね」
「わぁ！げば！きれい」
「セクシーぃ」
とのたまってくれた。
げばの返事は決まっていた。
「いや馴染んでないのよ。私は気に入らない。」
すると彼女らは
「見慣れてないからよ。そのうち、あなたの目もその眉毛になれてくるわ」
なるほど
そういうものなのだろうか？
アイブロータトゥーその後
施術をして４ヶ月たった。
毎日鏡に映る我が顔に、いちいち絶望していたが、
月日が経つうちにすこしずつ落ち着いてきた。
眉が落ち着いたのか、見る目が落ち着いたのか
どっちかわからないが、
要するに、私自身がこの顔を受け入れはじめたのだ。
もともと大した顔でもなかったし、
まあいいかと妥協したのだ。
私の妥協点で最たるものは眉の形。
施術前に平行眉を希望したが、却下された。
理由は似合わないため。
無理に眉山を剃り落として平行眉にしても、自分の眉の形でないため
とてもいびつになるらしい。
そしてここイギリスでは圧倒的にアーチ眉かストレート眉が人気である。
ストレート眉というのは平行眉のようだけど角度がある眉だ。
私の眉はストレート眉らしい。
さて職場では、
私の眉をみて、自分もアートメイクしたいという人が増えてきた。
眉が整っていると、顔がキリッとしてくる。
逆にボサボサで手入れしてない眉はそれだけで老けた印象になるのだ。
みんなアートメイクはお金がかかる。と思っていたようだが、
こんなに安く、手軽に、近所でできるということに少し驚いていた。
それだけ需要が増えてきたのだろう。
そしてこの眉タトゥーは薄毛対策にも応用しているらしい。
今までの薄毛対策はかつらや毛生え薬などを用い、毛を増やすことだったのに、
今の薄毛対策は薄毛の部分にアートメイクをして色を乗せ、
髪があるようにカムフラージュするのだ。
カムフラージュといえばメイクもそうだ。
昨今のメイク技術はすごい。
化粧前、化粧後の動画をみていると
これが同一人物かと思うほど綺麗になってしまう。
婚活市場ではこの「化粧後」の顔を看板にしているので、
もしその女性が婚活にうまくいって、
男にスッピンをみられたら
「この女！顔が違う！詐欺だ！」
なんて騒がれないだろうか？
と、私はいらぬ心配をしてしまう。
なにはともあれ
女性が美しくなるのはいいことだ。
動画のなかでは
化粧後の女性はみんな幸せそうな顔をしている。
「詐欺」といわれようが、
幸せならいいではないか。
「人は外見ではない」ということばがある。
でも手っ取り早く幸せになりたかったら、
まず外見を変えるのを私は強くお勧めする。