離婚には4種類ある。
最初は協議離婚、そして調停離婚、審判離婚、最後に裁判離婚である。
夫婦間で納得して、離婚届を出すのが協議離婚。
調停員を間に財産をきれいに分けて離婚するのが調停離婚。
それでもまとまらず弁護士を通さねばならなくなった場合は審判離婚と呼ばれる。
裁判離婚は、離婚を絶対終わらせる最終章である。
目には目を
夫は怒り心頭で
現れ、ポリスに
促されて
でて行ってくれた。
だが
いちごちゃんの車のキーも
いっしょに持ち去った。
彼女は夫が罵った言葉を
思い出した。
「お前が不動産屋に電話して
作業を中止させたように
俺もDVLAに電話して
作業を中止させてやる!」
DVLA (Driver and Vehicle Licensing Agency)は
日本語で言うと、
運転免許証交付局及び運輸支局と言うところだろう。
以前の、Mediationのミーティングで
財産分与の話をしたとき、
車の話をした。
「お二人とも車を持っていますね。
両方とも夫ジョージ名義ですが、
二つに分配するので、
妻が使ってる車は妻の所有となります。」
夫ジョージはそれに同意して、
車の名義を妻の名前に書き換え、
その書類をいちごちゃんに渡した。
彼はそれを思い出し、
腹いせに車の所有権を奪うと叫び、
車のキーを奪っていったのだ。
夫のリクエスト、Mediation再開
いちごちゃんは
すぐさまテレサ弁護士にメールした。
彼女は直ちにジョージに抗議文を送ってくれた。
彼は憤慨して、
Mediatorに問い合わせた。
『妻がMediationで決めたことを実行してくれない。
もう一度話し合いを持ちたい』
こうして
いちごちゃんたち夫婦は
第2Mediationで、
再び顔を合わせることになった。
第2回Mediation
これは前回の話し合いで決まったことである。
『妻は勝手に弁護士に相談し、2の取り決めを破ってしまった。』
とのジョージの訴えに、
回答を求められたいちごちゃんは
「少しややこしいので、
きちんと整理して作成された
私の弁護士の手紙をお見せします。」
と言って
テレサが用意してくれた手紙を
Mediatorに渡した。
彼は
その手紙を
「Oh!」
「My God!」
とかいいながら読み終わり、
ジョージに言った。
「彼女は間違っていないようです。
以前取り決めた誓約書には
とあります。
彼女が弁護士に相談したのは
この文章に従っています。
むしろ
取り決めを破ったのはあなたの方ですよ。
ジョージ、
この取り決めの中に、
妻にお金を払うのに
”家のローンという形で払っていい。”
なんて
記述はどこにもありません。」
そして、いちごちゃんの方を向き直した。
「あなたはどうされたいのですか?」
いちごちゃんは真っ直ぐMediatorを見て
こういった。
「私はもう2度と
夫ジョージと
直に
離婚の話はしたくありません。
これからの話し合いは
すべて弁護士を通します。」
Mediatorはうなずき、ジョージのほうを向く。
「報告では
”あなたは
妻の車のキーを
勝手にとっていった”
とありますが、
なぜ、
そのようなことをしたのですか?」
ジョージは
「ああ!
それは……
私の車のキーと似ていたので
間違えて取っちゃったんですよ。」
(いちごちゃんの車のキーには
彼女のキーホルダーがついていた。
まちがえたなんて、真っ赤な嘘だ)
といちごちゃんは思った。
その後の話し合いも
実りになる提案がでてこなかった。
Mediatorは言った。
「この離婚は
おそらく
弁護士を通さないと
成立しないと思われます。
よってMediation
はここで終了し、
これからは各自が
弁護士を通して
話し合いをされること
を提案いたします。」
ここで
ジョージに急な電話が入り、
彼は場を一時中座した。
いちごちゃんも
「もう時間ですので
私は失礼します。
ありがとうございました。」
とMediatorに
頭を下げた。
その時
彼は声をかけた。
「よく弁護士に連絡して
この事態を回避したな。
いちご!
君はよくやったよ。
Well Done」
Mediatorは中立の立場を
取らなければならない。
だから
こう言った発言は
公に
口にしてはいけないものだ。
でも
ジョージがいない部屋で
思わず彼の
人間としての
本音がでたのだ。
「お待たせしました。」
と言いながらジョージが入ってきた。
入れ替わりに
いちごちゃんが部屋を出て行く。
Mediatorは
ジョージに気づかれないように
親指を立てた。
「グッドラック」
のサイン。
いちごちゃんの顔がほころんだ。
丁寧にお辞儀して
いちごちゃんは
部屋を後にした。
さあ
審判離婚のはじまりである