ヴェロナの街はロミオとジュリエットの舞台となっており、
ご丁寧にジュリエットの家にはバルコニーまである。
そのバルコニーを見て思った。
家が密集しているのに、
夜遅く、
いい家のお嬢が
「おお、ロミオ、あなたはなぜロミオなの!」
なんて大声で
(隠れていたロミオに聞こえたのだから多分、大声)
バルコニー、
つまり屋外で、叫んでいたのだから
………えらい近所迷惑な話だ。
ジュリエットにご対面
たくさん人が集まっている方向に歩いていくと、
ルイーザが教えてくれた。
「ここの門がジュリエットの家らしいよ。」
中世の石畳の道は
車が通れないほど狭い。
入っていくと、
それでも小さな土産物屋とかが数軒並んでおり、
そのテーマは「LOVE」
ピンクや赤のハートでいろんなグッズを販売していた。
だから
私たち、新婚旅行で来ました!というカップルが多い。
この物語は「悲恋」で終わるということを知らないのか?
中庭の中には金色に輝くジュリエット像がある。
観光ガイドには
ジュリエットの右胸を触ると幸せな結婚ができると言われているらしい。
こんなのでっちあげに決まってる!
だいたいジュリエットの結婚だって幸せな結婚じゃなかったじゃないか!
おばさんは1人そう思った。
そばで、日本人らしい女が右胸を触ってポーズをとり、
キャッキャ言いながら
連れらしい仲間に写真を撮らせていた。
みんなが触るせいか、
彼女の胸元からの色が違う。
金色に輝いているのはみんなが触るからだ。
銅像の胸に触って、
そしてそれを写真に撮る行為。
女の胸を触っている妻の写真を見て、
その夫となる人物はどう思うだろうか?
確実にヘンタイの目で見る。
私も写真を撮ったが、彼女の胸に触るのは遠慮した。
銅像とはいえ、胸に触るなんて悪趣味だ。
…….多分ジュリエットはホッとしたと思う。
あやしい照明
ジュリエットの家をでた後も、
ルイーザのサイトシーンは継続された。
4日も滞在するのだから、今日すべて見なくてもいいではないか?
最初は素直に後ろをついていたげばだったが、
だんだんいい加減になって、
彼女が丘に登って行こうとしても、
「しんどいから私はふもとでビール飲んで待っとくから」
なんて早々とギブアップしてしまった。
なんだかんだでやっとホテルに戻り、
スーパーで買ってきたワインと生ハムで夕食をとった。
どうせ他に客は泊まっていないんだ。
Daddy YankeeやEnrique Iglesiasなんかを聴きながら、
私たちはいい気分で飲んで踊った。
さて
夜もふけたことだし、
私たちはお互いのベッドにもぐった。
私たちの部屋はツインの部屋。ホテルのオーナーは
私たちの部屋をツインとダブル、両方準備していたらしい。
ダブルだと、ルイーザとベッドを共にしなければならない。
ツインでよかったと心底思った。
ワインのおかげで、2人ともすぐ寝入ってしまったが、
夜中の2時、
2人とも目が覚めた。
私の方のベッドランプがこうこうと照らされていたからだ。
「ルー!どうして電気つけたの?」
私は不機嫌な声で文句を言った。
ルイーザはもっと不機嫌で、
「もう、あんたのサイドランプじゃない。早く消してよ。」
ところがこのランプのコンセント、ベッドの後ろに固定されており、
こちらからは消せない。
(こんなことってあるのか?)
もう!
ぶつぶつ言いながら、私はトイレに行った。
帰ってくると、
ランプに布がかけられている。
「なんじゃこりゃ!?」
私が尋ねると、
「ランプ消せないなら、隠すしかないでしょ。まったく寝られやしない」
よく見るとその布、パンティである。
パープルのレースがついた
パンティ!
ぱんティ!!!!????
「なんだ!なんだ!なんで!隠すのにパンティ使うかなぁあああ!」
ルイーザは小さい声で
「それがランプにジャストフィットだったのよ。」
「ジャストフィットって!あーた!
…..せめてパンティは新(サラ)なんでしょうね!?」
ルイーザは答えない。
(サラじゃないんだ!)
瞬時に悟った。
「いやでも!クリーンだよ!カバンから出したやつだよう!」
(……こいつ!)
パンティをひっつかんでルイーザのベッドにほうってやった。
絶対!
なんとしても
電気消してやる!
私はベッド下の点検を始めた。
そしてコンセントから伸びる、延長コードに黒いボックスを発見!
そのボックスのスイッチを切ったらランプの灯りが消えた。
「げば!あんたすごいじゃん!どうやって消したの!」
私は一言、
「……magic」
そう言ってベッドに入り込んだ。
全く….
知らない人がこのパンツ被ったランプ見たら
あらぬ想像をされるだろう。
そして、もしツインじゃなくてここがダブルのへやだったら…..
げばはもう一度思う。
「ダブルだと、ルイーザとベッドを共にしなければならない。
ツインでよかったと心底思った。……….本当に良かった。」