2023年の2月27日。

とんでもないニュースが届いた。

水の都、ヴェニスの水が干上がって

ゴンドラが陸地に打ち上げられている。

あれ!

まあっ!

水の都に水がなくなったらどうなるのかい?

そう思っていたら、

数週間後、

イタリアでは大雨が降り、

ヴェニスはめでたく「水の都」に戻った。

しかしそのすぐ後の、

2023年3月27日

水域の戻った運河めがけて

アホな旅行者が

ダイビングしたのだ。

まったく、

水がないとトラブル。

水があってもトラブル。

…….最近のヴェニスのニュースはなんでもアリである。

ヴェニスといえばゴンドラ

私が一生でしたいこと

そうだな?

•オーロラを見ること

•サバンナに行って野性の動物を見ること

それから

•水の中にある街を歩く

…んなアホな!

いや豊臣秀吉だって

「鳴かぬなら、鳴かせてみせよう、ホトトギス」

っていってた?じゃない。

わたくしだって、

「水の中、歩いてみせよう、ゴンドラで」

いいじゃない!

ということでやってきた

駅の前のゴンドラ乗り場。

見るとゴンドラ一つで80ユーロもするという。*約1万1577円ー2023年3月

「ちょっと!30分そこら乗っただけで、1人40ユーロなんて高いよぉ!」

節約家のルイーズは口をとがらす。

なんとかもっと安くならないかと

いくつかの乗り場を調べたが、

安い乗り場は見当たらない。

料金は一律同じとヴェニス市がきめていたのだ。

そのうちゴンドラ乗り場のにいちゃん達は昼食に出かけ始めた。

イタリアの昼食は長い。

ケチらずにさっさっと乗ってればよかった。

げばが後悔していると、

黒シャツのイタリア男子が声をかけてきた。

「ハアーイ、君たちゴンドラ待ってるの?」

えっ!

ナンパ?

いやまさか!

中年女は詐欺師のターゲット

「ここのゴンドラ乗り場は昼食で空いてないけど、

ウチなら開いてるよ。ここの乗り場のルートは

広いとこ回るだけだけど、

ウチのルートなら細かい路地とか行くから面白いよ。

料金は一律に決まってるけど、

同じ80ユーロなら、うちのルートの方が、

全然お得だよ。」

彼はゴンドラの客引きだった。

地図を見ながら語る彼のルートは

なるほど

確かに面白そうだし、お得感がある。

ルイーザも話に加わり意気投合した。

彼は私たちを乗り場に案内しようと歩き出した。

その時、げばは妙な違和感を感じて

黒シャツに尋ねてみた。

「ねえあなたがゴンドラの船頭だっていう証明を見せてくれる?」

黒シャツはなんのことだ?というような顔をした。

ルイーザが私の意図を察して言い直してくれた。

「あなたのIDを見せてと言ってるのよ。」

「ああ、僕のIDね」

彼はイタリア人ならみんな持ってる身分証明書、Cartad’ldentitaを見せた。

ゴンドラの船頭のIDを見せろと言ったのに、国民証のようなIDを出したのだ。

げばもルイーザもいぶかしんだ。

顔を見合わせて無言で合図する。

「へい、黒シャツさん、私たち気が変わったわ。」

黒シャツはあわてて

「レイディズ!えっ! どうして!」

私たちは後を見ないで早足にその場を離れた。

「あいつ、絶対詐欺師だったよね!」

まったく

おばさん達は無知でお金を持っていそうだから

すぐカモにされる。

ここは王道に正規の船頭さんを待つ方がいい。

ゴンドラ乗り場に帰って、にいちゃんを待っていると、

ラテン系の男女がやってきてなんだかんだ自国の言葉で話していた。

「この人たちもゴンドラ乗りにきたのかな?」

げばはその人達に話しかけた。

「ねえ、あなた達もゴンドラ待ってるの?」

「そうよ。あなたもなのね。」

ラテン女が微笑んで答える。

(この人たちいい人かも)

そこへルイーザもやってきた。

ラテン男女はブラジル人。

そしてブラジルの公用語はポルトガル語。

ルイーザはポルトガル人。

「キャーうれしいわぁ」

3人はポルトガル語で(すごいいきおいで)喋り始めた。

そして一つのゴンドラを

わたしたちはシェアすることになった。

アミーゴ!あみーご!Amigo!

運河の橋のたもとに

ゴンドラ船頭さんがいた。

赤と白のストライプのシャツを着た、若いお兄ちゃんだった。

IDをみせてもらうと

ヴェニス市公認のゴンドラ船頭IDをみせてくれた。

こいつぁ本物だ。

ゴンドラに乗っていると、よく別のゴンドラにすれ違う。

みると、すべての船頭さんはみんなおなじ赤と白のストライプシャツを着ていた。

(黒シャツはいない。)

要するにこれが彼らのユニフォームみたいだ。

そのお兄ちゃんも明るい人で、聞くと彼のお母さんはブラジル人で

なんと彼もポルトガル語が話せる。

私たちのゴンドラは

5人中、4人がポルトガル語を喋るので

自然とラテン系の輪ができあがった。

みんな英語もできるので

2ヶ国語で繰り広げられるジョークと歌はノリノリで

げばもルイーザもお腹を抱えて笑い転げた。

げばはブラジル人が男女ということで、勝手に「カップル」だと思っていた。

しかし彼らは、恋人でもなんでもなく、ただの友達らしい。

ラテン男はじつはゲイで、

女に興味がない。

つまり外見は男だが、

心は乙女。

なるほど

彼らは

私たちと同じ

女子会延長のホリデーとして

アモーレの国、イタリアにやってきたのだ。

女が男を愛するように、

男が男を愛して何が悪い?

ゴンドラが船着場に到着すると、

私たち女子は調子に乗って

船頭のにいちゃんとツーショットをきめた。

にいちゃんもサービスで女性の肩を抱いてポーズを撮った。

しかし、

にいちゃんはラテン男の肩は抱かなかった。

まあアモーレのイタリア男も

とっさにとった行動は案外正直である。

空を見上げると、

いつのまにかサンセットの時間になっている。

これからゴンドラでためいき橋に行くカップルは

伝説のサンセットキッスするんだろうか?

ときにはゲイのカップルだって……..

そんなこと思いながら、げばはヴェニスを後にした。

投稿者 geba-

21年の国際結婚にピリオドを打ち、今現在シングルアゲインしています。この生活は思った以上に快適で、NHSの病院で働きながら、漫才みたいな生活を楽しんでいます。女子トーク、イギリス生活、そしてシリアスな人生観を書いていきます。

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