朝がきた。
いつものように
慌ただしい時間である。
子供たちは
ギリギリに起きて
服を着替えながら
のっそり目覚めていく
ゆっくりでも大丈夫
なぜなら
彼女たちには
「マミータクシー」が
学校に連れて行ってくれるから
突然の送迎拒否宣言
その日、
げばは
子供たちに宣言した。
「これから
あなたたちは
歩いて学校に行きなさい。
お母さんは
車であんたたちを
学校に届けるのを
やめます。」
「え〜〜〜〜〜〜!!!!!」
寝耳に水とはこのことである。
りんごちゃんも
みかんちゃんも
パニックである。
「そんな!学校に遅れるじゃないの!」
げばはいう。
「あんたたちが困るだけで、
私は困りません。」
りんごちゃんは怒ってる。
みかんちゃんが涙声で聞く。
「どうしたらいいの。」
げばは思わずニヤリと笑った。
お母さんをリスペクトする方法
「私はね、『タクシー』じゃないの。」
「あんたたちは
歩いて学校に行かねばならないところを
ラッキーにも車で連れて行ってもらうのよ。」
「マミーは車で送るのが当然みたい
に思ってほしくないのよね。」
りんごちゃんが反論する。
「歩いて学校まで30分かかるのよ!
遅刻間違いなしじゃない!」
「だったら、」
げばはおごそかにのたまう。
「きちんと
お母さんにお願いするのが筋でしょう。」
みかんちゃんがいう。
「Mummy, Could you take me to school please?」
げばはいう。
「英語じゃダメよ。」
「それを日本語で言いなさい。」
朝のセレモニー
りんごちゃんとみかんちゃんは
呆気に取られて
「そんなのできるわけないじゃない!」
げばはいう。
「教えてあげるからこれからは
きちんとお願いしてちょうだい。」
「日本語でね!」
げばはサラサラと紙に
セリフを書いた。
「これを言ったら
お母さんは
ご機嫌で
学校に連れて行ってあげるわよ。」
その魔法の言葉とは
「今日は仕方ないから
紙を見てしゃべっていいわ。」
「でも次回から
暗記するように。」
「では、言ってみましょう。
ごいっしょに?」
りんごちゃんと
みかんちゃんは
大真面目で
「Oka-sama, oisogasi tokoro…….」
と声を合わせる。
やがて
このフレーズはりんごちゃんと
みかんちゃんの血肉となり、
流行歌を歌うように、
スラスラ言えるようになった。
日本語授業で
スピーチ部門を担当していた
日本人の先生は
このセリフを聞いて
声をあげて笑ったという。
しかし
このフレーズはテストにはでない。
残念である。