離婚というものは
夫から見ると
長いこと働いて得た
すべての財産を
半分失うことである。
妻にとっては
長いこと育て上げた
「家庭」という城
をすべて失うことである。
新しいお家
いちごちゃんは
お家探しを始めた。
夫と購入したファミリーハウス
には未練はない。
夫との思い出のある家に住むのは
はっきり言って
苦痛だから。
夫が新しいお家を購入できるお金を払ってくれるなら
そっちの方がいい。
しばらくして
いちごちゃんは素敵な物件を見つける。
2寝室で16万ポンド。
家はすこし手直しが必要だが、
気に入って
購入することにした。
夫に聞くと、了承したと回答してくれた。
そして、自分がその家を購入する手続きをすると言ってくれた。
新しいお家購入に際して
いちごちゃんは明るい笑顔を見せてくれていた。
暗雲がやってくる
しばらくして
不動産会社から連絡が来る。
「ご購入された2寝室の物件、
お支払いがまだです。
一体いつお支払いされるのですか?」
いちごちゃんはびっくりして
夫に連絡する。
「資金繰りに困っているんだ。もう少し待ってくれ。」
そしてそのまま
4週間がすぎた。
不動産会社からまた電話がかかってきた。
「これ以上お待ちできません。
ご遺族の方は急いでおられるのですよ。」
実はこの物件は、
そこに住まれていた、一人暮らしのおばあさんが亡くなって、
その財産分与のために遺族が早急に売りに出していたのだ。
夫の提案
「いちご、
いろいろ調べて、対策を練っているんだが、
どうしても資金が調達できないんだ。
そこで提案なんだが、
僕が君のアパートを買うために
ローンを組むなんてどうだろう?
それなら
銀行は納得して
お金を貸してくれるんだ。」
不動産屋はいう。
「それは朗報です。
あんないい物件は2度とありませんからね。
よかったじゃないですか。」
いちごちゃんは納得しなかった。
「それじゃあ、
あなたがこの先、
もしローンを払えなくなってしまったら、
私は住む家を失うのよ!」
夫の説得
どうしても
首を縦に振らないいちごちゃんに
夫は、仕事のパートナーに援軍を求めた。
彼と夫、いちごちゃんの3人で話し合った。
彼はいう。
「君の心配は、
ジョージがローンを払わなくなった時どうなるか
だろう?
それではどうだろう。
誓約書を交わそう。
僕が保証人になるよ。」
そしてジョージは役所からとった(という)、「公的書類」を持ち出し、
いちごちゃんに見せた。
それには
ジョージはXXXの物件に10万ポンドを最初に入れ、残り6万ポンドをローンにして返済する
と明記してあった。
そして用意してあった誓約書には
「ジョージが必ずローンを最後まで返済する。」
という文句が「簡単な英語」で記されていた。
「君の見つけた、あのアパート、本当にいい物件だよな。僕が住みたいくらいだ。」
とジョージはいう。
「君は何も面倒なことをしなくていいんだ。お金を払うのはジョージ。
住むのは君だ。」
と保証人はいう。
「僕は絶対、君の家のローンを払い続けるよ。
僕を信じてくれ。」
と夫はいう。
いちごちゃんは
とっても疲れていた。
面倒なことを考えたくない。
本当にそうだった。
無理矢理いろんなことを考えて、
心も押しつぶされて、
そして一瞬思う。
この人をもう一度信じたい。
人を信じられない人間ほど
悲しいものはない。
もうこれでいいんだ。
そして
いちごちゃんは
書類に
サインした…..